発展のためのアドバイス集《30》

あなたは本当は何が欲しいのですか?

昔私がある自己啓発セミナーに参加して体験したことです。
二人一組になってお互いが椅子で向き合い、一方がただひたすら同じ質問をし、それに対して頭に浮かんだものを即座に口に出す…という簡単なカリキュラムでした。
その質問とは、『あなたが欲しいものは何ですか?』…だけです。
例えば『お金』と瞬間に頭に浮かんだものを答えると、すかさずまた同じ質問を何度もされます。
そしてまた頭に浮かんだことを答える…これを15分間も続けます。
大抵の人は欲しいものが一杯ありますから、お金、家、車、別荘…と立て続けに答えが出てきます。
しかし、だんだん応え方に不思議な変化が出てくるのに気付いてきます。
最初に浮かぶものは目に見えるもの、例えば『お金や物や自分の容姿』がほとんどなのですが、徐々に目に見えないもの、例えば『記憶力・魅力・包容力・統率力・権力』などが浮かび、次に『愛しあえる恋人・理解しあえる家族・何でも話しあえる親友』などの人との関係に変わり、そして最終的にはほぼ全員が、言葉につまりながらも同じ答えしか頭に浮かんでこないのです。
『安らぎ、愛、安心、喜び、平和』…ほとんどの人がこれらの言葉しか応えられなくなってきます。
そしてなぜか、『最初に答えたものはそれほど欲しいものではない』…と気付いてきます。
お金や物は、誰もが実はその背後にあるもの、つまり『目に見えないもの』が欲しいのであって、お金そのもの、物そのものを欲しがっているのではないことに気付きます。
しかもそれらを手に入れたとしても、一緒に喜んでくれる人がいなかったり、安らぎや愛や喜びなどに繋がらないものであれば、とても虚しい物であることにも気が付きます。
人はお金や物は目的ではなく、あくまでもそれらは目に見えないものを手に入れるための一つの手段であり、その目に見えないものとは、多くの人と喜びを分かち合える状態を、本当の自分(本心)が望んでいるということになります。
しかも、お金や物がなくても、それらは自分の考え方を変えるだけで簡単に手に入れられることにも気付きます。
『執着』とは、本当に自分が欲しいものではないものを追い求めること、つまり、手段を目的だと勘違いすることを言うのかも知れません。


人を変えることはできない

社内では毎週水曜日に『パラミタ会議』と称し、全社員8時から様々な議案について話し合っております。
ちなみに『パラミタ』とは、『般若心経』の原語である「パーニャパラミタ(サンスクリッド語)」から来ています。
原語の意味は、「自らの心に内在された叡智を解き放つ」ということです。
私がよく講演会などで、「答えは全て自分の中にある」と言っているのは、実はこのパラミタの考えから来ています。
人生には様々な問題が発生したり悩みが生じたりしてきます。
一般的にはそれらの解答を導き出そうと、人に相談したり本で調べたりすると思いますが、しかし仏教では「問題が生じた瞬間にその解決法、悩みや疑問が生じた瞬間にその答えが、実は最初から自分の心の中にある」と教えています。
そしてその答えを導き出す方法は、たった一つです。
『その結果に対し、他人や外ではなく自分に原因がないかどうかを調べること』
一言で言えば「反省」ですね。
思い通りにならないことが人生です。
ましてや他人を変えることなど誰もできません。
でも自分の考え方を変えることは?
また、自分の行動を変えることは?…よっぽどこちらの方が簡単です。
自分が変わることで、周囲が、そして全てが変わると私は思います。
どんなに難しい問題でも、「簡単だ!自分の中で答えを探せばいいだけなんだ!後はそれに従って実行する!失敗したらその原因を探り、また次の方法を探せばいいだけ!」
…般若心経の思想は実に楽天的です。(笑)


吉田松陰の考え方

明治維新の指導者:吉田松陰は、このパラミタの思想(般若心経)に通じていた節があります。
NHK『龍馬伝 第6話』の松陰密航のシーンで次の台詞がありました。

桂小五郎(※後の木戸孝允)「密航が見つかれば、先生は死罪です!もしアメリカに渡れたとしても、二度と日本には戻ってこられません!」
吉田松陰「それが何じゃ!そりゃ、失敗するかも知れん。黒船に行き着く前に、捉えられるかも知れんし、アメリカ人に乗船を拒まれるかも知れん。それでえいっちゃ。何もせんでおることより、その方が何千倍、何万倍も値打ちがある!
桂「しかし…。」
松陰(両手を思いきり広げて)「見ろ!僕には言い訳など何もない!どんな運命が待っちょろうが、後悔せん!僕が今やるべき事は、黒船に乗り込んで、アメリカへ行く事じゃ!」
坂本龍馬「ま、待ってつかぁさい!松陰先生、わしも、わしも一緒に連れてってもらえませんろうか?今の先生の話を聞いて、わしは自分がなんちゅうこんまいことで悩んじょったか、自分が恥ずかしゅうなりました。わしも、わしも先生のような生き方がしてみたいがです!」
松陰(龍馬を殴り)「馬鹿たれ!黒船に乗り込んで、アメリカに行くんわ、僕のやるべき事であって、君じゃない!君は何ものじゃ、何の為に、この天のもとにおる!君がやるべき事は、なんなんじゃ!」
龍馬「…。」
松陰先生「考えるな、己の心を見ろ!」
龍馬「心…。」
松陰「そうじゃ、そこにはもう答えがあるはずじゃ!

なぜ吉田松陰が多くの志士に影響を与え、時代を変えたのか。
それはこの実直さであり、熱意であり、自らの心に忠実だったのではないでしょうか。
自分の心の中に答えを見つけたら、後は躊躇せず実践することの大切さを学びました。



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